熱伝導(過渡応答)シミュレーションの事例

1. はじめに

当社では設計検討時にFEMシミュレーションを行っており、そのソフトウエアとしてLISA(Ver.8)を使っています。

FEMシミュレーションのソフトは初期契約料と維持費となる年間の使用権料が発生します。
そのため設計を主体とした事業収益でFEMシミュレーションのソフトを利用し続けることは難しいと感じています。

当社で利用しているFEMシミュレーション・ソフト、LISA
このソフトは買切りで、1本あたり約$300.00(カナダ・ドル)のソフトウエアにです。
日本円にして1本あたり約30,000-円。
資本金50万円で起業したときに、このソフトの経費には助かりました。

現在、導入してから約10年になります。
設計時の強度や剛性検討に必要なシミュレーション機能があるので助かっています。

今回は、LISAで行った熱伝導シミュレーション(Thermal Conduction)で過渡応答(Transient Response)の事例を紹介します。

2. シミュレーションの条件

以下に示された図は熱伝導シミュレーションの対象となったモデルと検討条件となります。

ステンレスのシームレスパイプをアルミのヒートシンクで挟み込みます。
このパイプをヒートシンクと線接触する周囲8カ所から熱が伝わります。

ヒートシンクの温度は150℃で一定としシームレスパイプの初期温度は0.0℃としています。
また熱伝導シミュレーションなので有限要素モデルの物理的な拘束条件は必要ありません。

今回は使用状態では対流伝熱は無いため、モデル対象の部品から周囲雰囲気への熱伝達率は設定しておりません。
またヒートシンクからの輻射伝熱も想定していません。

【注意事項】

各種の物理的な数値を示してありますが、単位に注意してください。
作成したモデルは、質量 (kg), 長さ (mm), 温度(℃), 力(N), 時間(Sec.)としております。
通常の場合、長さは(m)で表記されておりますので、(mm)への変換が必要になります。
また、比熱は重さ(g)で示されておりますが、ここでは(kg)に変換して示しています。

ここで表示されている物理的な値を利用される場合、利用された結果について当社は責任を負いません。
また利用した結果における損害についても責任を負いません。自己責任でお願いいたします。
そのため、物理的な数値については、画像として表記しております。

3. シミュレーションの結果

LISAで計算されたポスト処理された動画を示します。
動画の再生時間は約30秒です。左下に解析時刻(TIME)が示されています。
今回は1秒ごとに結果を表示し、0 ~ 90秒までの温度変化を示しています。
これまでは頭の中で想像していた温度分布の変化が視覚的に理解でき共有できるようになりました。

またFEMシミュレーションによる熱解析は以下の二点の検討を行います。

  • 十分な時間が経過した定常状態における温度分布
  • 温度が変化したときの過渡的な温度分布の変化(過渡応答)

今回はヒーター電源をONにしてからの温度上昇時間を検討を目的として行いました。

 

4.ヒートシンクの経年劣化について

昇温-冷却を繰返すと様々な理由からヒートシンクは変形します。
残念ながら当社では繰返し回数や熱サイクルなどから経年使用に伴う変形を予測することはできません。
その代り、変形に伴い接触部が減少する可能性について検討することはできます。

先のモデルを使い、熱を伝える線接触が8カ所から4カ所に減少した場合について計算してみました。

 

5. 経年劣化を想定したシミュレーションの結果

この動画についても再生時間は約30秒です。
当たり前のことですが、目標温度150℃に達する時間は8カ所から4カ所に減ったことで延びることが確認できます。

 

6. おわりに

今回、熱伝導に関するシミュレーションの事例について紹介しました。
装置設計だけでなく、このような検討についても請負います。

ご相談などがあればお問合せからお願いいたします。

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