技術者が独立するために必要なこと (2017年4月20日)

この記事を書いてから4年が経過しました。
公開当時、セカンドキャリアが注目され、早期退職が促された時期です。

この記事についても、大変、注目されました。
当時から4年が経過しましたので、内容を見直してアップすることにします。

1.はじめに

『フリーランスのエンジニアになりたい。』
あるいは、『憧れている。』

そんなポジティブな思いを持つ方は多いのかもしれません。
一方で、勤務先の評価が低く見えてしまいネガティブな理由で独立を考える方もおられると思います。

技術士の資格取得を機に、私自身はフリーランスとして独立しました。
その後、経費管理を厳密にしようと思い、個人事業を法人化しました。

独立して8年。
法人になって7年が経過しました。

将来を考えて独立を考えているエンジニアの皆さんの参考になればと思い、これまで体験してきた一部をご紹介します。

2. 技術士資格の取得について

技術士資格を取得しようとした動機は、

『技術士会や所属する会員から仕事が融通してもらえるかもしれない。』

という甘い見通しからでした。

技術士会は人的ネットワークを形成することを主な目的としている場です。
この記事を書いた当時と比べると、業務受託に関してはかなり改善されてきました。
しかし、融通していただけるような状況にはなっておりません。

また『技術士』の管掌官庁は文部科学省であり、産業界との接点も薄く資格に対する知名度も低いです。
そのため技術士を名乗っても、収入につながる仕事は少ないです。

一方、企業で求められるものとしては開発管理や開発企画です。
また関連する従業員が必要な管理ツールを使えるようになることです。

専門的な技術に対する指導について問合せを受けることはありませんでした。
また、補助金申請のお手伝いで中小企業診断士の方々と組むことが多いです。

資格取得のメリットとしては、技術者としての能力が技術士法により担保されることでしょうか。
特定の独占業務があるわけでもないので、メリットを感じることは少ないです。

3、 経費の管理

仕事を受託すると、経費が発生します。
最初のうちは『領収証を集めて整理しておけば良いのかな?』と考えていました。

2015年から確定申告の色(白色か青色)に関係なく現金出納帳の記載が義務化されています。
個人事業者として独立したとき、青色申告会で記帳の仕方(簿記)を勉強しました。
法人化してからは記帳はすべて自分で行い、月度と期末の決算は税理士の先生にお願いしています。

これから独立を考えている方は、簿記3級程度の知識と実務能力を身につけておかれたほうが良いと思います。
便利な記帳ソフトもありますが、簿記実務に関する知識がないと正確なデータ入力ができず、確定申告時に困ってしまいます。

4. 自己資金

仕事の見通しがあって独立した場合、年間の売上額も予測できます。

人生、明日のことは判りません。
サラリーマンを辞めた日、私の場合、当てにしていた仕事が流れてしまいました。
その後、いろいろと頭を下げた結果、開発の仕事を得ることが出来ました。
しかし、7カ月の間、お客様に拘束されてしまい、他の仕事を入れられませんでした。

しかも、その間は無収入で貯金の大半を崩すことになってしまいました。

法人化してからは、期末決算時までの収入と経費支出がほぼ等しくなりました。
また次の売上まで現金が手元にありません。
法人市民税や税理士への決算報酬の支払いに個人の貯金を引当て資金繰りに苦労しました。

そんな反省を踏まえ、独立をする場合の自己資金は1年間、無収入でも生活できる貯金は必要だと思います。
経費支出の具体的な内訳を挙げていくと、以下のようなものがあります。
目安として500万円の自己資金は準備しておいた方が良いと思います。

2019年に資本金増資をしましたが、その時の経験から、最低でも資本金は300万円は準備しておいた方が良いと思います。
法人設立後、5年の間の累積赤字が約300万円でした。
ちょうど累積赤字と釣合う資本金が300万円ということです。

  • 仕事を得るための営業経費
  • 県民市民税
  • 年金保険、健康保険などの社会保障費用
  • 日々の生活費 (家庭での家事費や水道光熱費、通信費など)

自己資金については慎重に見積り、ご自身でご判断下さい。

5. まとめ

今回、大事な点として以下のようなことを説明いたしました。

  • 技術士の資格だけでは、仕事は得られません。
  • 経費を税務書類として記帳管理する簿記3級程度の能力
  • 仕事が入らなくても事業を継続し、生活が維持できる自己資金

6. エンジニアが独立するために必要なこと

最後に、エンジニアが独立するために必要な要素を考えてみました。

大学の工学部や工業高等専門学校を修了した学生、工業高校を卒業した生徒の多くは、就職した企業で事業維持・拡大に必要な技術開発を任されることになります。
この技術開発に必要な開発費用や日々の生活費は、事業者が事業経費や従業員給与として用意します。

またエンジニアとして成長に必要な経験は、日々の研究開発業務から得られます。
必要に応じて、教育の機会も与えられます。

これらの要素を自力で用意できるようでしたら、エンジニアとして独立しても大丈夫だと思います。
エンジニアとしての能力は、お勤めの企業が投資して用意した環境と構築してきたビジネスモデルの中ではぐくまれるものです。

個人の能力だけで、エンジニアとしての能力を高められるものではありません。

独立をお考えのエンジニアの皆さん。
ご相談には応じます。
ホームページのお問合せより、ご連絡下さい。

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