1D解析(SCILAB/XCOS)
野良猫の糞害が多かったので、超音波で追い払おうと考え、超音波発振器の試作を作っていました。
発振回路は、ナショナル・セミコンダクタのCMOSタイマ LMC555を使っています。
LMC555のデータシートから回路設計は可能ですが、もう少しデジタル技術を利用して検討しようと考えました。
具体的なデジタルツールとしてScilabと対になっているXCOSを利用し発振動作をモデル化してみました。
当社では、このようなシミュレーションで数値実験を行った上で、設計開発を進めています。
LMC555による発振回路
以下の図はナショナルセミコンダクタ社が公開している日本語データシートからの抜粋になります。
この回路図を例としてXCOSでモデルを作成してみました。
回路の詳細については、データシートに記載されているので、そちらを参考になさってください。
モデル化の方針
発振動作は、コンデンサCへの充放電を繰返すことで発振します。
そこでコンデンサCへの充電過程と放電過程について、それぞれモデル化することにしました。
コンデンサCへの充電過程
充電過程をモデル化するにあたり、コンデンサCに充電される単位時間当たりの電荷は電流にあたります。
そこで、その変化に着目しつつ、キルヒホッフの法則から微分方程式を組立ます。
(微分方程式は、下図の式になります。)
この微分方程式を元に、XCOSによる充電過程モデルを作成しました。
はじめに微分方程式を以下のように移項、整理します。
dEc/dt 項を左辺に、それ以外の項を右辺にまとめます。
次に dEc/dt 項の積分するので、積分ブロック(1/S)を置きます。
この積分ブロックの出力がEcとなります。
この積分ブロックへの入力に、微分方程式を整理した時の右辺が入ってくるようにします。
そのブロック線図が以下のモデル図になります。
XCOSによる充電過程の解析結果
XCOSによる解析結果を右図に示します。
グラフに示した式はデータシートに示されていた例題の簡易計算式です。
概ね一致していることが判ると思います。
概ね
コンデンサCの放電過程
充電過程と同じように微分方程式を組立ててXCOSによるモデルを作成しました。
微分方程式は、下図に示されています。
また放電過程で注意する点は微分方程式にあるゼロを外部入力としてモデルに入れておく点です。
このゼロ入力がないとモデルが成立しません。
このモデルを解析した結果が以下のようになります。
XCOSによる放電過程の解析結果
XCOSによる解析結果になります。
グラフ内の式は、データシートに示されていた例題の簡易計算式です。
ほぼ一致しております。
まとめ
発振の周期についてはデータシートの計算式を使えば求められますが、XCOSを使うことで発振周期だけでなく過程も確認することができます。
現在、当社ではMATLAB/SIMULINKを使っております。
SIMULINKのモデルは『検証可能な動く仕様書』として位置付けられており、モデルベースデザイン(MBD)の中核として認識しています。
このような開発スタイルにご興味があれば、ご遠慮なくお問合せください。
追加(2022年9月8日)
Scilab/XCOSをはじめてつかう方のためのテキストを販売いたしました。
元々は、scilab/XCOSのダウンロードサイドで配布されていたものです。
現在、公開は停止しています。
よろしければ、刃金からくり屋 通販サイト からご購入下さい。