強度シミュレーション(メッシュサイズの影響) その2

前回の続き

前回、FUSION360を使って三次元CADデータに作成したメッシュサイズを変更する方法を説明しました。
また『モデルベースのサイズ』が3%より小さくなると要素数や節点数が極端に増えることや、得られた結果をまとめたグラフを示しました。

今回はメッシュの細かさ(メッシュサイズ)によっるFEMシミュレーション結果の変化を検討します。
机上検討で得られた計算結果に対し、どの程度の誤差になるのかが数値で確認できます。

メッシュサイズとたわみの変化

『モデルベースのメッシュサイズ』を1~10%の範囲(整数)で変化させたとき、それぞれのメッシュサイズで得られた先端たわみの計算結果を示します。
以下に示される図は、先端たわみに対する計算結果をまとめたグラフになります。

メッシュサイズがデフォルト値の10%の時、先端たわみは24.97 mm でした。
机上検討結果と比較しても誤差は-0.354 mm (-1.4%)になります。
実用的には問題ない値だと思います。

このメッシュサイズを1%にすると、先端たわみは25.29 mmとなりました。
机上検討結果と比較すると-0.03 mm (-0.12%)ですから、一致していると考えても良いのかもしれません。

10~1%の間をグラフにまとめると、メッシュサイズを小さくすることで計算精度も高くなる様子が判ると思います。

メッシュサイズと曲げ応力の変化

次に拘束位置における曲げ応力について検討してみます。
以下に示される図は、曲げ応力に対して計算結果をまとめたグラフになります。

メッシュサイズがデフォルト値の10%の時、この曲げ応力は200.8 MPa でした。
机上検討結果と比較しても誤差は-22.2 MPa (-9.6%)になります。
机上検討結果との誤差が10%以内なので、実用的な精度の範囲内だと思います。

このメッシュサイズを1%にすると、先端たわみは223.7 MPaとなりました。
机上検討結果と比較すると+1.5 MPa (0.68%)となります。
ほぼ一致していると考えられます。

先端たわみと同様に10~1%の間をグラフにまとめると、メッシュサイズを小さくすることで計算精度も高くなる様子が判ると思います。

メッシュサイズが細か過ぎると精度が落ちる

メッシュサイズを1%にしたとき、机上検討結果に対し曲げ応力の計算値が大きくなりました。
今回はFUSION360ですが、実は他のFEMシミュレーションソフトウエアでも同様の傾向が見られます。

メッシュサイズを細かくすると机上検討結果に近づきます。
しかし細かすぎると、机上検討よりも大きな計算結果が得られてしまうのです。

この部分については、学術的な考察や一般的な知見もありません。
そのため推論となります。
メッシュサイズを細かくすることで、計算時に桁落ちや情報落ちのような誤差要因が目立つようになります。
これらの誤差要因が細かくしたすべてのメッシュで発生し、机上検討結果よりも大きな計算結果が得られてしまった。

そのようなことだと思われます。
FUSION360は1%までですが、さらに細かくできるソフトウエアの場合、曲げ応力の値は机上検討結果と比べて大きくなります。

適度なメッシュサイズが精度を上げる

一般的にFEMシミュレーションは、メッシュサイズを細かくすればするほど精度が高くなると言われています。
しかし、当社で調べてみると精度が得られるメッシュサイズの範囲があることを確認しています。
そして経験的に、その範囲内で作成されたシミュレーションモデルを利用すれば、得られた結果を安全に利用することができます。

ある完成車メーカに対し、シミュレーション結果を提出したことがあります。
そのとき精度を担保する意味で、このようなシミュレーションソフトウエアの校正結果も添付し、受け付けていただいたこともあります。
自分たちが利用する強度シミュレーションの精度を定量化しておくことは、大事なことだと思います。

メッシュサイズと誤差率の変化

先端たわみと拘束位置における曲げ応力の誤差率をグラフにまとめてみました。
メッシュサイズがデフォルトの10%の時、それぞれの結果の誤差率も10%以内なので、実用的な精度だと思います。

したがって、デフォルトの状態で強度シミュレーションを行って得られた結果は、安全に利用できると思います。

以下のグラフは、次のような使い方にも利用できます。
例えば、シミュレーション結果の精度を5%程度にしたい時、メッシュサイズを5%にすれば、要求される精度の結果が得られるわけです。
このグラフによって、メッシュサイズを調整することにより、得られるシミュレーション結果の精度をコントロールすることが可能になります。

しかし、注意も必要です。
精度が高い方が安心できるとは思いますが、精度に対する高い要求はコスト上昇を伴います。
具体的には計算時間が長くなったり、利用するコンピュータに高い性能が求められたりします。

シミュレーションソフトウエアの校正

当社では机上検討結果を基準とし、シミュレーションの計算結果と比較し誤差を定量化することを『シミュレーションソフトウエアの校正』と呼んでいます。
同じ問題でメッシュサイズを変化させ、得られたシミュレーション結果をグラフ化する。
このような作業によりメッシュサイズに依存するシミュレーションソフトウエアの計算精度が定量化されます。

メッシュサイズを変えて、同じ問題を繰り返しシミュレーションすることは面倒だと思います。
しかし、この手続きを踏めば、メッシュサイズによるシミュレーションの誤差を把握したうえで結果を安全に利用できるようになります。

ここでご紹介するのは一例です。
お使いのシミュレーションソフトや実行環境で計算精度の確認を行ってみてください。

ご不明な点等がございましたら、お問合せよりご連絡ください。
シミュレーションソフトウエアを校正して利用するようになり20年近くになります。

強度シミュレーションの精度に不安があるようでしたら、お気軽にお問合せください。

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