1 対象の三次元形状モデル
削り出しの部品らしいです。
設計は取引先様になります。
内部に圧力が負荷されるので、締結する時のボルトサイズや本数を決めるために強度検討を始めました。
経験がなけれは、この状態で有限要素を作成し、コンピュータの性能を頼りにシミュレーションを繰り返すのかもしれません。
しかし、時間が掛かりますし、合理的ではありません。
分割している部分を中心に対象に力が作用します。
効率よく解析するために、1/2モデルにして、解析モデルを作成します。
2部品ありますが、1部品だけをSTEP形式に変換し保存します。
保存したSTEPデータから有限要素モデルを作成するため、LISAを起動し、STEPデータをインポートします。
2 LISAでSTEPデータをインポートする
LISAを起動し、”Geometry”をクリックし、マウスの右ボタンをクリックすると、”Import STEP/IGES file”というメニューが開くので、クリックします。
メニューの”File”からサブメニューの”Open”でもSTEPファイルを開くことができます。
STEPファイルを開いても、画面にモデル形状は表示されません。
そのかわり、”Geometry”のフォルダーの下に、開いたSTEP形式のファイル名が表示されます。
その変化を見て、正常に開いたかどうかを確認してください。
3 FEMモデルを作成します。(解析メッシュの設定)
開いたSTEPファイルの形状に有限要素を作成します。
開いたSTEPファイル名をクリックし、マウスの右ボタンでコンテキストメニューを開きます。
最初に設定することは、有限要素のサイズ(大きさ)を決めます。
なお、FEM解析ソフトには単位の概念はありません。
基本的にはユーザーが単位系を考え、その中で作成したモデルを元に計算しています。
三次元CADでSI単位系で作成していれば、そのサイズになります。
機械ですと長さの部分がmmですので、その点にだけ注意してください。
有限要素のサイズ(メッシュサイズ)はメニューの”Meshing parameters”をマウスでクリックし、選択します。
以下の画面が表示されます。
一番、上の項目 “Max. element size” に有限要素のサイズを入れてください。
ただし、目安です。すべてを設定したサイズで作成するわけではありません。
以下の
- Min. number of elemnets per curve
開いたSTEP/IGESファイルなら、形状のカーブ(エッジ)に対し、分割して貼り付ける最小の要素数 - Min. number of elements per edge
LISAで作成した解析モデルのエッジに対し、分割して貼り付ける最小の要素数
を設定します。
デフォルトで、以下のようになっていると思いますので、変更しなくても良いです。
LISAを使い、自分で解析モデルを作成する場合、エッジ(Edge)の方を調整することがあります。
今回は、三次元要素を使うつもりなので、作成するメッシュは “Volume mesh” を選択します。
形状の部分的に要素サイズを変更することも可能です。
三次元形状の場合、曲げ加工が必要な部分は要素サイズを細かくすることもあります。
黎明期の頃は、FEM解析が専任の人たちで業務を行っていました。
メッシュサイズに、このようなバラつきを設けると、解析結果の精度にバラつきが生じます。
専任同士では、どの部分の精度が高いかが判っているての゛誤差が生じている部分の結果は無視して議論できました。
現在は、計算機感覚で使っていらっしゃる方も多く、計算方法によっては経度が悪くなることもありますが、その点は議論されません。
モデルの形状に合わせ、精度の高い部分と低い部分を設けてしまうと、その違いが判らず、誤った結果を導き出す場合もあり得ます。
計算方法や原理が分からない状態でそのようなテクニックを使うのは問題になりかねないため、一様なメッシュサイズで解析するようにしています。
そのまま”OK”ボタンをクリックし、設定が完了します。
有限要素メッシュの作成を開始します。
4 FEMモデルを作成します。(解析メッシュの作成)
“Geometry”の下にあるSTEPファイルをマウスでクリックし、右ボタンを押してコンテキストメニュ―を表示します。
このコンテキストメニューの上から3番目、”Generate mesh”を選択し、解析用のメッシュを作成します。
メッシュジェネレータが起動し、開いたSTEPファイルの形状に有限要素の作成を始めます。
3 節で設定した要素サイズが小さいと、接点数の制限値を超えてしまいメッシュが作成できません。
また、ハードウエアのメモリーサイズが小さくて、作成できない場合もあります。
メッシュが作成されない場合には、メッシュサイズを変更し、大きくして試してみてください。
5 FEM解析用のメッシュは作成できましたか?
下図に示したようにFEM解析用のメッシュは作成できましたか?
ハードに搭載しているメモリーは32GBですが、かなり重たいです。
思うようにモデルの回転や移動ができません。
残念ですが、この先の検討には重くて使えそうにありません。
モデルの見せ方を変えても、データが重い状態は変わりません。
以下の理由から三次元要素を使ったFEMモデルでの解析はあきらめました。
- ファイルサイズが大きく、重たい
- 荷重条件や拘束条件などの境界条件設定処理に対し、パソコンの処理時間が掛かりそう。
- ネジ締結位置での拘束力を求めたいが、そのための節点集合を作成するための作業時間が長くなる。また効率も悪い。
- 周方向や軸方向の変形や応力分布を、節点上の計算結果を使いEXCELでまとめたい。
三次元要素だと応力分布図などの視覚的な結果表示しかできず、具体的な数値での評価がしずらい。
変形についても、三次元要素だと、視覚的な変化は見えるが、数値としての評価がしずらい
まとめると、三次元要素は視覚的な分かりやすさからインパクトはあります。
しかし工学的な検討としては物足りないので、折損などのクリティカルな状態を評価しずらいのです。
そのため、二次元要素でFEM解析モデルを作成することにしました。
モデルの作り方については、別の機会に説明します。
三次元要素で解析モデルを作成する場合、ここまでの説明で大丈夫だと思います。
5 解析種類の選択(参考情報)
今回は、三次元モデルで、三次元要素を作成するつもりでしたので、解析は”Static 3D”を選択しています。
少し前の記事で選択方法と選べるソリューションをまとめています。
そちらをご覧ください。
【CAE/FEM】 自分が利用しているFEMソフトは『LISA』です。 | 刃金からくり屋
6 自分の使い方(いろいろエンジニアリングが分かってくると、ミッドレンジCADは使えなくなります。)
三次元CADに組み込まれたFEMアプリでは、二次元要素や一次元要素が使えない場合があります。
そのため、AlibreDesignのようにモデリングのみの三次元CADを選んでいます。
部品モデルの強度を見るだけなら、それでもいいと考えます。
では、FEMアプリケーションで何をしていると思いますか?
疲労解析や振動解析などをするときには、三次元要素では情報量が多すぎるのです。
振動解析に三次元モデルはあまり必要ではありません。
質量の分布が知りたい時には三次元要素も考えますが、基本的には質点で考えます。
場合によっては、慣性モーメントなどを考慮するかもしれませんが、具体的な形状は必要ないのです。
また、疲労解析では、得られた振幅応力に対し、S-N曲線をあてはめて、疲労限界を予測します。
三次元要素の場合、振幅応力が正確に得られない。
そうすると、三次元モデルをベースにしたFEM解析は強度・剛性(変形)を知るには良いかもしれません。
設計上、細かく検討する場合には、適切な情報が得にくいというのが現実です。
実際、疲労解析については、ある程度、FEM解析で予測できるところまではできるようになりました。
今回の課題となっていた締結方法についても、ボルトのサイズと締結数を参考情報として提供しています。
本音の部分では、ミッドレンジなどは高額な割に、必要な情報が得にくいという感想を持っており、あまり選択の候補には上がらないのです。