1 油圧シリンダのボア径(直径)はどうやって決めたの?
期間限定で超法規的措置により造船できた船舶です。
一般的な装置開発では出来ないようなこともあります。
昇降機メーカーに勤めなければ体験できない昇降の仕組みを検討することになりました。
以下の写真は実機と、AlibreDesignで設計した昇降装置となります。
このモデル図にある油圧シリンダ。
ボア径(直径)の設定が問題になります。
油圧ポンプから送出する圧力は『パスカルの原理』からボア径(直径)の大きさで出力可能な最大荷重が変わります。
油圧シリンダは1本の値段が大きいので、選択ミスで機能しなかった場合、補償問題につながりかねません。
1品ものの試作装置とは言え、失敗したときの予備費が用意されていませんでした。
当時、2本で150~200万ほどと聴いていましたので、個人事業で補償するには難しいと思っていました。
自動車業界では『試作レス』で量産車を開発する。とも言われていた時代がありますが、まさにそれを言われました。
当時は『モデルベース開発』を宣伝していませんでしたが、仕様開発から取り組まないと開発できない状況でした。
また、油圧系の話は別の事業者と打合せ中とのことでしたが、結局、どこも手を挙げなかったため引受けることにしました。
空気圧のシステムは現場合せ(いわゆる現合『げんごう』)で組み立てていたのですが、さすがに油圧となると空気圧と同じとは言えない。
事情を話、油圧機器メーカーの営業と打合せをさせてもらいました。
2 油圧シリンダーに必要な荷重はどれくらい?
以下の図面は、油圧シリンダーに必要な荷重(ボア径)を求めるために、必要な荷重を計算したときの結果になります。
『計算書は必要ない。』
とのことでしたが、現場に説明する資料は必要なので作成しました。
助かったのは、三次元CADで設計していたので、かなり正確に重量が計算できたことでした。
フレーム用の鋼材は鋼材表に単位長さあたりの重量(ノミナル値)が掲載されています。
ですから、使用するフレーム材の長さが判れば、概算ですが昇降装置『ランプウェイ』の重量が求められます。
でも部材が多く面倒です。
そこで三次元CADの部品データに鋼材の密度(比重)を設定します。
そうすると、完成したモデルの重量が即時に計算されます。
非常に助かりました。
3 計算は続きます
シリンダの取付位置(角度)から、油圧シリンダの押出し力は船首に向かう水平方向と鉛直方向に分解されます。
面倒なのは、昇降によって分力が変化することです。
この辺は分解式をEXCELに設定して、昇降角に応じて生じる分力を計算しました。
EXCELで計算された値を見ながら、降伏応力に達しないことを確認し、油圧シリンダのボア径を設定しています。
荷重計算は、昇降機の『ランプウェイ』の設計にも影響します。
この『ランプウェイ』の自重やマイクロバスの車体重量が、油圧シリンダの先端を取付けるピンと支点となるピンに負荷されます。
構造設計でポイントになるのが、負荷される荷重を水の流れとしてとらえ、シンクとして集約される結合部分(拘束部分)の設計になります。
強度計算をしていて、いつも思うことは、負荷の伝達経路(引張・圧縮とせん断)を決めて構造を考えると設計ミスが少ない構造設計ができます。
この場合、伝達する荷重が組み合わさる結合部分の設計が重要になってきます。
引張・圧縮荷重とせん断力が組み合わされるような部分だと、その状況にあった形状で設計しないと繰返し疲労などで折損する可能性もあります。
そんなことから、支持点の荷重を図面にまとめました。
4 まとめると
外力の計算なので、機械力学の知識で求めるのですが、一部、材料力学の梁のたわみ式などを組み合わせる部分もあります。
10年以上、前の検討内容なので、この図面から求め方を推測することはできます。
しかし計算書が残っていないので、詳細については即答できないです。
生成AIにでも投げてみれば、答えが出てくるかもしれません。
ご興味があれば、お問い合わせください。