1 AlibreDesignで開発した2013年頃の製品の事例です
AlibreDesignは安価ですし、FEM解析による機能もないので大した設計はできないと考えていませんか?
それは思い込みですし、少々、考えが浅いです。(笑)
これは国土交通省の研究所、海洋安全技術研究所が造船した実験船です。
なお、現行法のなかでは違反となる仕様なので、実験期間を定めた『超法規的措置』が発令され製造されました。
『超法規的措置』期間が終了後、廃船となり、現在は跡形もありません。
この船舶の付帯設備を法人成する前の個人事業のときに、AlibreDesign(Professional)を使って設計しました。
具体的には、緑色に塗装された部分になります。
以下の図は、AlibreDesign(Professional)で設計した付帯設備だけの図です。
これは、陸から最大8t(トン)以下のマイクロバスを乗船させたり、船から陸に移動する時の橋になる設備です。
開発時には『ランプ・ウェイ』と呼んでいました。
ランプウェイの昇降は油圧シリンダを行います。
機構設計(軌跡検討)はEXCELで計算しました。
EXCELで得られた計算結果を元に、昇降時に油圧シリンダがランプウェイに掛ける負荷を計算しました。
その負荷から水平方向と垂直方向の分力を計算し、最大値と最小値を使って強度・剛性検討を行いました。
この場合は、最大負荷時に必要な昇降に必要な荷重を求めることから始まります。
結果的に計算書は作成しませんでしたが、検討結果だけは図面としてまとめました。
2 この船舶の用途は? (開発背景の説明)
さて、この『超法規的措置』までして造船した、この実験船の目的と用途は何でしょうか?
日本の法律では、乗客を乗船させる船舶としては、鋼鉄製で排水量が20t(トン)以上の船舶しか造船許可が出ません。
また、その場合、乗客は車から降車し、船舶に用意された客室に移動することが条件となります。
この船舶はFRPで船体が製造されており、積載するものは8(t)以下のマイクロバス1台になります。
本来でしたら、マイクロバスの乗客は降車しなければなりません。
そこで、乗船したマイクロバスを船舶に固定して客室と見なし、乗客を降ろすことなく海上運搬することを仮想目的として造船されました。
このような実験船が造船された背景は、急速に進む高齢化と海上交通網の衰退です。
日本国内には、島嶼部にも住む人たちがいて生活しています。
そんな島嶼部も高齢化が進み、高齢化対策予算の増額を抑制することが喫緊の課題となっていました。
当時は、移動するコンビニエンスストアや医療機器を搭載した巡回病院のような車の移送が目的でした。
現在では、なかなか外出できない高齢者向けに移動販売車がサービスとして特定の地域を巡回しています。
そんな社会の到来を予見した取組みでした。
実験結果が良好なら、法改正となる予定でした。
その後、ドローンや空飛ぶ車が登場し、法改正して進める海上輸送よりは、現行法で進められるドローン輸送にシフトしてしまいました。
3 結局、強度計算は手計算でした
現在、AlibreDesignのオプションにFEM解析ツールがあります。
当時もFEM解析ツールはありましたが、準備期間が短く準備ができませんでした。
そのため、強度計算は手計算で行いました。
面倒でしたが、断面二次モーメントを計算し、梁のたわみ式にあてはめてたわみ量を求めたり、曲げ応力を算出しました。
強度計算については、私自身、手計算でもできたので、設計に必要な三次元CADがあれば仕事②なりました。
現在、利用しているLISAは、この数年後に導入したものです。
AlibreDesignを選択する場合、強度計算などは手計算でも検討できないと、難しいかもしれません。
強度検討の事例は、改めて掲載したいと思います。