1 メッシュサイズとFEM解析の結果の関係を使って精度が出なかったみなさんへ
ステップアップする段階です。
メッシュサイズの調整は、『ソフトウエアの精度校正』に相当する部分です。
CAD / FEM ソフトを利用するうえで、基本的な事前準備となります。
ここに真面目に取り組んだ皆さんは素晴らしいと思います。
しかし、いくつかの形状や、その形状要素が含まれている形状では精度が出にくい場合があります。
今様の言葉を使えば、『地雷』のような形状があります。
以下で説明することが判らなければ、問題が解決しないのでお問い合わせください。
あるいは精度が出ない場合も同様です。
直接、電話を頂いても構いません。
実際に、電話をいただき、打合せさせていただいてFEM解析を請負ったこともあります。
値段は、お越しになられた方から提示された金額で協力させていただきました。
現在は個人になりましたので、打合せ場所はご指定の場所、もしくは愛知県豊橋市で行わせていただきます。
なお、学生の皆さんのレポートや卒業研究への協力はできかねます。
まずは指導をなさっている先生方にご相談ください。
さて、本題に入ります。
2 三次元モデルに適用するFEM解析の三次元要素の特性をご存じですか?
メッシュサイズとFEM解析の精度の関係を思いついたキッカケになります。
実は、
三次元要素はせん断変形をモデル化していません。
私も20代の頃は、解析専任で仕事をしていました。
専任の担当者どうしでは、せん断変形のことは知られていましたので、三次元要素は解析精度が悪いので、あまり使いませんでした。
現在は三次元CADで作成したモデルを使い、FEMが当たり前のようになっています。
しかし、『せん断変形をモデル化できていない。』という事実は変っていません。
現実の変形はせん断ひずみと引張圧縮ひずみが組み合わさっています。
それならば、引張圧縮ひずみが支配的な状況になるまでメッシュを細かくし、せん断ひずみの影響を最小限にすれば、精度が高くなる。
そんな理屈で、2000年1月に大手自動車メーカーの担当者と一緒になって確率した手法なのです。
せん断ひずみの影響を最小限に抑え込めない場合、メッシュサイズを調整しても精度は出ません。
すこし、下の図を説明すると、引張圧縮ひずみを、x, y, zの直交座標系に対し、dx, dy, dzとします。
それに対し、せん断ひずみは回転ひずみなので、∂x=(∂z – ∂y), ∂y=(∂z-∂x), ∂z=(∂y-∂x)となります。
FEM解析の計算アルゴリズムでは、引張圧縮ひずみとせん断ひずみの分離ができないのです。
3 せん断ひずみの影響を最小限にできないような形状や形状要素は
メッシュサイズをとFEM解析の精度の関係を調べ、『ソフトウエアの精度校正』という概念が誕生した背景は分かっていただけたと思い須磨。
次にメッシュサイズの調整だけでは、せん断ひずみの影響が無視できない形状について考えてみましょう。
はじめに、皆さんに質問です。
どのような形状なら、せん断ひずみが支配的になりやすいと思いますか?
Chat-GPTに質問しても構いません。
質問の仕方が悪いので、例は提示されませんでした。
以下の図を見てください。
断面形状か゛左右非対称の二等辺山形鋼の断面図です。
図のような使い方をした場合、弾性主軸とせん断主軸は一致せず、負荷がかかるとねじれます。
図のように弾性主軸とせん断主軸が分離するような形状の場合、せん断ひずみの影響はメッシュサイズでは押さえられません。
NASTRANでも同様の実験をしたことがありますが、満足できる高い精度はでませんでした。
他にも、パイプ断面が挙げられます。
パイプの場合、断面が変形しやすいため、せん断変形が生じやすく、この場合もメッシュサイズを調整しても高い精度は得られませんでした。
4 回避する方法はあるの?
回避する方法はあります。
三次元要素よりも精度が高い、1次元要素、二次元要素を使ったFEMモデルを作り直すことです。
ただ、1次元要素、二次元要素での解析経験を持つエンジニアでないと、モデルの勘所が分からないので、いきなりは難しい。
自分はNASTRANを使い、一次元要素、二次元要素で構造モデルをつくり解析をしてきました。
ですから、メッシュサイズの調整では精度が得られない場合、三次元CADを使って設計するモデルとは別に、最初からFEM用のモデルをつくります。
FEM解析の結果を理解し、三次元モデルに反映させればいいだけのことですから。
その辺のノウハウや勘所は、ブログ記事に書いて説明できるものでもないですし、読んでも理解しずらいと思います。
ですから、冒頭に書いたとおり、素直に『電話で直接でもいいので、電話をかけて問い合わせてください。』ということになります。
二次元要素の『地雷』部分もあるのですが、現在は三次元CADで作成した形状モデルをベースにFEM解析を行う時代です。
またの機会に説明したいと思います。