【AlibreDesign】AlibrePDMの効果(ローエンドなのに、PDM機能はありがたい)

1 三次元CADの悩み

出図した図面(モデル)が設計変更となり、ファイルを開いたら、次のようなエラーメッセージが出たことがありませんか?

リンク先にファイルがありません。
該当するファイルのリンクに置き替えてください。

AlibreDesignですと、以下の図に示されるようなウィンドウが開き、リンクが切れているファイルを示してくれます。
原因は、不注意でフォルダー名を変更したり移動させた場合に発生します。

面倒なのは、修正したリンクは保存されないことです。

ファイルを開くたびにリンクの修正を要求されるのです。
回避方法は、リンク先を修正後、『別名保存』し、修正後のファイルを保存することです。

これは、これから行う設計業務を止めないための一時的な回避策で、恒久的な対策ではないのです。

そして、このことはローエンドとして分類されているAlibreDesignだけの話ではありません。
ミッドレンジのSolidWorksでも、ハイエンドのCATIAでも生じる問題です。

 

2 組立図(モデル)の構成

認識を共通にするために、組立図(モデル)の説明をします。
以下の図を見て、意味が分かる方は、この節は読み飛ばしても構いません。

前節で挙げた、ハイエンドのCATIA、ミッドレンジのSolidWorks、ローエンドのAlibreDesignに共通している内容になります。

ここで列挙したCADはCSG方式で部品図(モデル)を作成するCADです。
また、それぞれの部品データは独立しています。

次に、これらのデータを組み合わせて組立図やサブ組立図を作成します。
このとき、組立ファイルでは部品データをインポートしていません。

もしインポートすると、組立図のファイルサイズは構成する部品ファイルのファイルサイズをすべて足し合わせたサイズになります。
ファイルサイズが非常に大きくなってしまい、スムーズな操作が難しくなります。
設計対象が小さいうちは気にならないと思いますが、車や船、飛行機などになると、画面がフリーズし動かなくなることが想像されます。

そのため組立図は部品データのリンク先や、部品構成、相対的な位置関係などがリスト化され保存されるファイルになっています。

組立図(モデル)を作成したときのフォルダー構成が、作図時の状態と変化しなければ問題なく開くことができます。
しかし、不注意でフォルダー名を変更したり移動された場合、保存された情報と異なるためエラーとして表示されるわけです。

組立図(モデル)のネイティブデータを取引先などに提供する場合、構成する部品図(モデル)も一緒に提供する必要があります。
それは大変なので、組立図(モデル)をSTEPデータに変換し、構成する部品図(モデル)が含まれた状態にして提供するわけです。

 

3 PDMってなにをするモノなの?

PDMはProduct Data Management の頭文字をピックアップして作られた造語です。

機能としては、二次元、三次元iに関わらず、CADデータの管理することになります。

この場合の管理は、登録されたファイルの移動、コビー、削除やファイル名の変更などを行います。
また管理する機能には、前節で説明したリンク切れなどが発生したいようにすることも含まれています。

そのほかにも図面データのチェック・イン/アウト機能がもあります。
これは、チームの誰かが、ある部品ファイルを編集している時、別の担当者がそのファイルを開けなくする機能です。

PDMはCATIAにあるSmarTeam(スマートチーム)が有名です。
現在ではENOVIA SmarTeam と呼ばれています。

以前、ENOVIAというPDM/PLM製品が別にありましたが、SmarTeamと統合されました。
ENOVIAはPLM(Product Lifecycle Management)までを管理するツールになります。

PLMは製品の量産期間、生産終了後の部品保証期間、そして製品寿命の製品寿命期間において、製品の図面データを管理するツールになります。
PDMの上位に位置づけられる機能製品になります。

今回のAlibrePDMの印象は、ENOVIAに統合される前のSmarTeamのように思えました。

これまでにもAlibreDesign用のPDMはありました。
以前のPDMは、開発元も強くアピールしなかったこともあり、私自身は利用していませんでした。

そのような背景もあり、今回のAlibrePDMには強い期待感を抱いてしまいました。

 

4 AlibrePDMの効果

日本では2025年1月から開示されましたが、それ以外では2024年8月のUPDATEからAlibrePDMの提供は始まっていました。
自己責任でAlibreDesign V28 Update 2に更新し、利用について試行錯誤していました。

現状の使い方としては『シングルエンド』と言いますが、個人用のPDMとして利用することが良いように思います。
インストール方法については、こちらを参照してください。

(URL:【AlibreDesign】Alibre PDMのインストールと利用するための設定方法 | 刃金からくり屋)

以下の図に示されるように AlibreDesign V28 Update 2 以降の起動ランチャーに、AlibrePDMの起動ボタンが付いています。
赤色の四角で囲んだアイコンをクリックするとAlibrePDMが起動します。

CADデータのファイルや保存したフォルダーに関してはAlibrePDMで保護されるため、リンク切れのようなことは起こらなくなりました。
また、データの更新履歴も管理されるようになり、すべてではありませんが以前のデータも残こるようになりました。

非常に満足した内容になっています。

以下の図で、左側は、これまで行っていたWindowsフォルダーシステムでのデータ管理になります。
右側はAlibrePDMでのデータ管理になります。

これまで機械要素部品など規格化された共通部品のデータをプロジェクト毎につくっていました。
保存しているフォルダーを移動されると、これまで作成したモデルのリンクが切れてしまうため、データを加えながらコピーして使っていました。

今回のAlibrePDMではライブラリー機能もありますので、PDMに登録しておけばプロジェクト毎にフォルダーをコピーする必要もなくなります。
業務改善のために、社内製品を構成する部品に対し共通部品を規格化しAlibrePDMに登録しておけば、設計業務の改善も図れると思います。

さらに、仕様などWordやExcelファイルで作成されたデータもAlibrePDMに登録することができます。

AlibrePDMに対する開発元のイメージは『金庫』なので、Windowsフォルダーに保存してあるファイルを原本とし、AlibrePDMにコピーを登録します。
モデルベース開発をしていると、開発仕様などの情報は設計の方針(トップ/頂点)などに相当するので、このような管理ができることはありがたく感じます。

5 AlibrePDMの使い方(開発元で開示しているドキュメントを読まないと、わからないこと)

つい最近まで、国内でAlibrePDMのインストールやデータの保存方法を提供しているサイトや情報はありませんでした。

AlibrePDMをインストールしても、AlibreDesignで作成した部品データはAlibrePDMに保存できません。
また、組立図を作成しようとすると、AlibrePDMに登録されている部品データからしか選択できないようになっています。

じゃ、AlibrePDMから直接、WordやExcelファイルのように、AlibreDesignの部品ファイルをコピーすれば良いのか?
と、考えて確かめてみると、AlibreDesignの部品データや図面データはコピーできない仕組みになっています。

自己責任で Update 2 に更新したわけですから、国内の代理店に質問するわけにもいきません。
開発元のドキュメントを探しました。

使い方が理解できるまで、不安でしたし、焦りました。
以下の方法で、AlibreDesignとAlibrePDMの連携がスムーズになります。

【注意】
AlibreDesignのグレードはExpertで、AlibrePDMはExpertの機能の一部として扱われています。
Professionalについては、AlibrePDMのライセンス利用料が必要になるようです。
(Professionalの話は、国内販売代理店に確認した内容です。ご興味があれば、お問い合わせ、ご相談をされてみてください。)

  1. AlibreDesignの起動ランチャを起動させる。
  2. 起動ランチャのタグを『ユーティリティ』に切り替える
  3. 『システムオプション』をクリック。
  4. 『システムオプション』ウィンドウにある「ファイルの保存先」のラジオボタンを「〇Windows」から「〇PDM」に変更する。
  5. 『OK』をクリックし、『システムオプション』ウィンドウを閉じる。

以上の設定変更で、AlibrePDMに部品データや図面データが保存されるようになります。

ただし、想像と違うこともあると思います。
次の節にも、目を通してください。

 

6 以上で納得し終わらないでください

このあと、AlibrePDMを使うことで、ソフトをインストールし、AlibreDesignの設定を変更したあなたは『便利になった』と思うでしょう。
私も、そう思いました。

しかし、困ったことも起こりました。
いくつかあるので、列挙します。

  1. 保存先をAlibrePDMに指定したので、WindowsフォルダーにAlibreDesignのネイティブファイルが保存できなくなった。
  2. 別名保存でも、保存先はAlibrePDMとなってしまった。
  3. 取引先にデータを提供する場合、同じAlibreDesignを使っていたとしてもデータをパッケージに変換して渡すか、STEPデータとして渡すしか方法がない。
  4. Expertのライセンスはネットワーク・ライセンスなので、これまではクラウドのOneDriveで部品データの共有化がはかれた。
    しかし、AlibrePDMにしてからは、シングルエンド対応なので、AlibrePDMの設定をネットワーク共有に変更しなければならない。
  5. 現状、AlibreDesignはネットワークライセンスなので、AlibrePDMを使うと、部品データが共有化できず、1台は保存先をWindowsに戻してしまった。

端的に、現在、抱えている不満を列挙したものです。
皆さんの会社での使い方に合う、あるいは少し業務のルールを変更すれば、AlibrePDMを使いこなせそう。

そういうところは、AlibrePDMの導入を進めても良いと思います。
メリットも多いし、大きいと思いますので。

一方、取引先もAlibreDesignを使っていて、ネイティブデータが必要な場合、AlibreDesignは、不都合な部分も出てきます。
開発元の視点で言えば、取引先とVPNなどでネットワークを共有し、どちらかにAlibrePDMのサーバーを立て、データを共有すればいい。

そんな回答になると思います。
国内の代理店、あるいは開発元がAlibrePDMのレンタルサーバーを立て、利用可能な保存先のサイズに応じた金額で利用できれば、
このような不満も解消できるかもしれません。

ただ、商業的に成功するかどうかは分かりません。

7 さいごに

2025年2月14日から17日までにアップした記事は、2025年2月7日(金)に開催されたWebinerの内容になります。
記事にしてみると、40~50分という限られた時間に、相当の情報量を詰め込んだように思います。

ご参考になれば良いと思います。

AlibreDesignの導入検討や導入後の使い方など、ご相談があればお問い合わせからお願いいたします。

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