【AlibreDesign】二次元CADのデータを自動で三次元データに変換できるのか?

1 三次元CADの歴史を遡ります

1980年に三次元CADが商用で販売され、今年で45年が経過しています。
そして、世界中で二次元CADのデータを自動で三次元モデルに変換することが研究されてきました。

人工知能などの技術も投入していますが、未だに実現した話を耳にしたことがありません。
45年も経過して、そのような技術がサービスや製品として出てこないのですから、今後も難しいと思います。

また歴史的にも、その考え方に近い三次元CADがありましたが、結果的に廃れてしまいました。

歴史を振り返ってみても無理だと思われます。

2 販売当初のCATIAでのモデリング手法

現在、販売されている三次元CADの中で1980年に商用販売されたCADは2つあります。
1つはCATIA。もうひとつはNX(元々はI-Deas/IBMはCAEDSと商品名を変えて扱っていた。)

現在のCATIAは、スケッチャーで小さな形状を作成し、その形状を足し合わせたり、削り落としたりして部品形状をモデリングしていきます。

当初は三面図に投影した投影図を元に三次元データを作成していました。
なんだか、『資産として持っている二次元データを使って三次元データを作りたい。』。
そんな願いが叶えられそうなモデリング手法です。

具体的には、三次元モデルのエッジが、各投影図のどのエッジを選択します。
このような作業を繰返し、コンピュータに三次元モデルを認識させていきます。

この時、各投影図のエッジを選択し、三次元モデルのエッジとして生成していく機能を「コンカティン(concaten)」と呼び、今でもCATIAのメニューには残っています。
非常に面倒な作業でした。

その頃には、現在のようなスマートなモデリング機能はなく、プリミティブと呼ばれる基本形状を使って部品形状を作成していました。
基本形状には、球、直方体、N角錐、円柱、チューブ、くさび形状などがありました。
また、部品形状を構成するプリミティブの数が多くなるとシステムがダウンするようなこともありました。

商用販売された三次元CADでのモデリングは、設計者が使えるものではなく、モデラ―と呼ばれる専門職が必要な状況でした。

そのような状況だったからかもしれません。
1980年台半ばに幾何公差などで仮想基準面として使われるデータムという概念が入り、その上にスケッチャーという機能が重なりました。
そこにパラメトリック設計と呼んでいましたが、スケッチャーの数値を変数として処理できるようにし、後からスケッチャーの値を変更できるようになりました。

ProEngineerという三次元CADの登場です。
このCADはEWS上で開発されたCADで、現在ではCreo(PTC社)というハイエンドの製品になります。
自分は1990年に、アメリカで三次元CADの研修時に体験し、その画期的なモデリング手法に驚きました。

その後、CATIAもスケッチャーによるモデリング手法を取り込み、現在のようなモデリング手法となりました。
実際、自分がCATIAで三次元モデルを作成していた頃は、1996年頃になります。
したがって、販売開始から15年の間に、二次元データを使った三次元モデリングは消えてしまいました。

3 ところで、三次元データの代表的なモデリングは2つあることを知っていますか?

最近はSolidWorksやFUSION360が主流となりっていますので、スケッチャーを使った作り方しか知らないとかもしれません。

実は、三次元CADの開発の歴史を見ると、以下の2つの手法に集約されます。

  • CSG(Constructive Solid Geometry)方式
  • B-Reps(Boundary Representation)方式

この節の冒頭で紹介したスケッチャーを使ったモデリングはCSG方式になります。
スケッチャーを使い、基本形状を作成し、その形状を加えたり、削り落としたりして目的の部品形状を作成します。

以前は、加えることを『和集合(∪)』、引くことを『補集合』、2つの形状の共通部分を残す『積集合(∩)』と数学の概念でメニューが作られていました。

2000年頃に、一般的でわかりやすい言葉に変わりましたので、その頃のことを現場で知っている人を見なくなりました。
専門学校で教えている学生は、それ以降に生まれてきているので、このような歴史は知らないです。

さて、もう一つのモデリング手法がB-Repsとなります。
商用販売当初のモデリング手法です。

現在では、Rhinocerasという意匠CADに残っています。

こちらは、三次元:形状を構成する面やエッジに注目し、数学的な幾何学形状のリストを作っていく方式になります。
製造業だと、基本的に機械加工で形成される形状を考えますので、直線的な形状や面が多くなります。

そのため、このような形状作成方法はなじみません。
自由曲面などを扱えるCADに多い作成方法になります。

 

4 現在の人工知能は、できるのでしょうか

現在の人工知能だと、写真などの画像データを使い、三次元モデルを生成することができるようです。
ただし、多面近似で犬や猫のように、インターネットで検索すれば、いろいろな角度からの画像データが得られ、三次元的な形状が類推しやすいものになるようです。

人工知能を学習させるために、図面データが必要になると思います。
また、図面の配置や構成は、作図者によって様々ですので、なかなか学習結果が収束するとは思えません。

それに設計は創造行為です。
人工知能は、インターネットを検索し収集したデータから、要求に合った形状を多面近似で出力してきます。

設計業務に人工知能が入るのは、仕様開発の部分が先になると思います。

5 さいごに

ここ数日、AlibreDesignに関する記事が多かったのですが、過日になりますが、2月7日(金)にWebinerでAlibreDesignの紹介をいたしました。
その時に紹介した内容を再掲しております。

はじめてのWebinerでAlibreDesignの紹介をしつつ、AlibreDesignを使った自社の営業などをするのは難しいですね。
そもそも、小規模開発で仕様開発から製造までを営業品目としており、AlibreDesignを中心に営業しているわけでもないのです。

LISAを使ったFEM解析もしますが、そのためにAlibreDesignが必要なわけでもありません。
一応、ターゲットは決めていましたが、直接、お会いしたことのない人が、初見で判るような話でもないので迷惑をかけてしまったと思います。

そこで、少し話を補足しながらブログ記事としてまとめてみました。

なにか引っかかることがあれば、お問い合わせください。

 

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