【AlibreDesign】ハイエンド、ミッドレンジ、ローエンドに意味はあるのでしょうか。? 

1 言葉の使い分けに意味はあるのでしょうか?

現実元CADの雑誌や記事を眺めていると、よく『ハイエンド』、『ミッドレンジ』、『ローエンド』という言葉とともに商品が紹介されています。
言葉の使い方としては、三次元CADの機能の高さや低さ、利用者のスキルに応じたような書き方をされているようにも読めてしまいます。

それぞれの三次元CADが想定している利用シーンや事業所の規模と表にしてみました。

1)【ローエンド】

事業所としては、1~50人程度の規模での利用が想定されます。
特に個人事業主や小規模事業者の方々などが入ってきます。

そのため、ミッドレンジやハイエンドのように、マルチ機能ではありません。

三次元モデルを作成し、製作に必要な図面を作図する。
その機能を中心にミッドレンジ、ハイエンドと同じ程度の作図機能が提供されています。

オプションで機能を追加すれば、作成した三次元モデルを使い強度シミュレーション(FEM)ができるCADもあります。
ここでは書きませんが、設計が進んでくるとFEMで必要な三次元モデルと設計している三次元モデルは異なるものが必要になってきます。

CAE/FEMいついては、別にソフトを用意した方が良いと思います。

自分のところではLISAを使っています。
カナダの製品で、3ライセンスで299ドル(カナダドル)です。
日本円に換算すれば、3~4万円になります。

簡易的なFEM解析をしながら、製品設計を行っています。

2)【ミッドレンジ】

事業所としては、50~500人程度の規模での利用が想定されます。
製品設計から製造(部品加工・組立・量産部品の製造)までを行う中小企業の方々が入ってきます。

そのため、設計だけでなく、生産技術で必要な作業性の検討、部品加工で必要なNCデータの生成などマルチな機能を持っています。
この部分に分類されるCADはWindows95以降に販売が開始されたCADが大部分を占めています。

製品自体も、大半はWindowsOS上で開発されています。

個人事業主や小規模事業者の方々が使うには、事業に関係しない機能も付いてくるため、少し過剰のように感じます。
逆に、事業を成長させる強い意思を持ち、実際にそのような事業計画を進めている事業者の方々には、必要なツールだと思います。

取引先の多くは規模や事業の方向性に関係なく、ミッドレンジCADを使っていらっしゃったので、維持費の負担が重くならないか心配でした。

3) 【ハイエンド】

事業所としては、500人以上の規模での利用が想定されます。
自動車や航空機の開発・製造を行うような大企業が入ってきます。
また、利用の仕方もグループとして三次元データを共有しながら開発するような使い方になります。

ミッドレンジCADは製品開発・設計から製造・販売までを行う企業単体、あるいは事業所を想定していました。
ハイエンドCADは、それらの企業や事業所がグルーブを形成し大規模ネットワークを構築して三次元データを流通させるような使い方を想定しています。
この部分に分類されるCADはWindows95以前に販売が開始されたCADが大部分を占めています。

2 利用範囲を図解します

表を使い、言葉の使い分けを整理しました。
しかし、現場で働いていると、現場のイメージに対し表を使い言葉で説明する区分けが結び付きません。

そこで、開発から製造までを三次元CADデータを使って図解したフローチャートがありますので、それにあてはめてみます。

  1. 【ローエンド】
    以下に示される図で緑の枠で囲まれた部分。
    ここを担うのがローエンドCADになります。
    部品形状や製品開発が業務の中心になりますので、その部分においては、ミッドレンジやハイエンドCADと能力的には変りません。
  2. 【ミッドレンジ】
    企業単体、あるいは事業所単体で、以下のフローを行っているようなところで利用されるのがミッドレンジCADになります。
    以下のフローにある設備・治具を開発、製作し販売する事業所ですと、微妙なところになります。
    断定的なことは言えませんが、事業内容によってはローエンドの方が適している場合もあります。
  3. 【ハイエンド】
    以下のフローが幾層にも重なるような製品をグループで開発・製造している企業体で利用されるのがハイエンドCADになります。
    自動車業界ですと、グループごとに利用するCADが推奨されるため、選択肢は少ないです。
    しかし、部品メーカー(OEM)は特定のグループだけの仕事をしているわけでもありません。
    現在、自動車工業会でも、取引の自由度を高めるため三次元データの流通性について議論しているようです。

このように表やフロー図で見る限り、CADの利用範囲で使い分けているようです。

  • 複数のレベルに差はなく、複数の機能を使えるか使えないか。(ローエンドとミッドレンジの差)
  • 1社で使うのか、グループで使うのか。(ミッドレンジとハイエンドの差)

このような分け方になると、選択もしやすいのではないでしょうか。

3 ハイエンドのミッドレンジの、本当の違いとは

以下のように歴史年表をまとめ、分類されているCADをつぶさに見ると、ハイエンドとミッドレンジの本当の違いが見えてきます。
厳密にいえば機能差かもしれませんが、Windows95より前に販売され商用化されたか、後に販売され商用化されたかの違いだと思います。

以下に『モデルベース開発の歴史』としてシステム(ハード・OS)/CAD/CAE/モデルベース開発の年表を示しています。

三次元CADの商用販売は1980年になります。
その時点から1995年のWindows95が販売されるまでに商用利用が開始されたCADの多くがハイエンドに分類されています。

また、歴史上、初めて三次元CADで開発された製品はBoing777(航空機)です。
こちらはハイエンドCADのCATIAを使い、日米の時差を利用して開発されました。

アメリカが夜になると日本は昼になります。
やり方としては、日本が昼間の時、開発作業をすすめ夕方になると、すべてのデータをアメリカに転送します。
日本が夜になるとアメリカは昼間になりますので、日本の開発作業を引継ぎ、続きを行う。

アメリカが夕方になると、再び、すべてのデータを日本に転送する。

このようにして開発されたBoing777の成功例を見て、自動車業界も三次元CADを使った製品開発に切替が行われました。
概ね1998年頃には切替が完了し、現在に至っています。

このような開発は汎用コンピュータ(IBM3090)上で行われました。
TSS(タイムシェアリングシステム)を使って、専用回線でつながったグラフィック端末からの処理要求に応えていました。

Windowsですとマルチタスク機能が近いです。

4 まとめ

取引先の業務内容や三次元CADの利用状況を見ていると、CAM機能を利用するためにミッドレンジCADを使っているところを多く拝見しました。

その一方で、CAM機能は内部的に生成したCLデータを加工機のNC装置に適したNC指令データへの変換が必要になります。
ミッドレンジCADのCAM機能より専用のCAD/CAMシステムの方が良い場合もあります。

加工機メーカーが推奨するCADがミッドレンジなら問題ないと思います。

事業内容から来る売上に対し、三次元CADの維持費用の負担は重くなったり軽くなったりします。
そのため、同業他社が使っている三次元CADを同じように導入した場合、売上が見合わず維持経費の負担が重い場合もあります。

良いツールを使っているから製品単価を上げられるわけではないです。
製造している製品の機能や品質が高いから値段を上げられるわけです。

事業内容に適した三次元CADを導入されることを願って止みません。

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