1 はじめに
前回のBLOG記事で、モデルベース開発は仮想空間における大部屋開発であることを説明しました。
今回は、モデルベース開発が求められる理由について、以下で解説したいと思います。
2 相談を受けた事例
愛知県半田市にある試作メーカーから相談を受けました。
内容は、ドローンの開発製作でした。
その試作メーカーへの依頼内容は、以下のような内容でした。
『
模型にプロペラ(ファン)を付けてみたら、飛行させることができた。
小型ながらモノを吊り上げることにも成功した。
模型を大きくして、60kgのまで吊り上げられる大型ドローンの試作を製作してほしい。
』
2年ほど前から引合いがあり、結論を出さなければならないのだが…。
【困っていること】
困っていることをヒアリングすると、以下のようなことでした。
模型が飛んだとは言うものの、詳細な仕様が判らない。
せめて、模型の貸し出しがあればいいのだが、それはNGとなっている。
また、模型を拡大すれば、同じようなものができると考えているらしいが、共振点などは変わるので、拡大すれば良いというものでもない。
FANの出力がどの程度なら、重力に対し揚力が上回り、飛行することができるのか検討の仕方もわからないし、共振などの問題もクリアできない。
経験のない領域なので、困っていました。
試作品の結果として飛ぶことが求められていました。
しかし、作れたとしても飛ぶことまでは経験もないため、飛ぶ保証なんて軽々しくできません。
相談を受けての回答は、残念ながら、受諾は取りやめた方が良い。でした。
私自身も、飛行するものは取り扱ったりことがなく、部分的に課題になりそうなことは申し上げられましたが、それ以上は応えられませんでした。
仕様設計の領域になりますが、何をどのように決め、仕様設計を進めればよいか分かりませんでした。
3 開発する製品仕様はどのように決めるのか
2024年の後半から小型EVに関するニュースを見る機会が増えました。
この小型EVを開発するとして、搭載するモーターや電池などはどのように決めていけばよいでしょうか?
まずは、彼我比較(ひがひかく)になると思います。
先行している製品の仕様リストを作成することはよく行われます。
これだけでも、なんとなく出力などのイメージが見えてきます。
しかし、ここで疑問が出てきます。
この仕様は、どのように決められたのでしょうか?
実験を繰返し、その結果から決められたのかもしれません。
後追いになる、自分が同じような実験を繰り返すことはできませんし、資金もありません。
比較した表の数値の根拠や決め方、その仕様の妥当性などは、どうやって確認しているのでしょうか?
規格が変更になった時、どのように変更すればよいのでしょうか?
モデルベース開発は、仕様の妥当性や内容を決めるために、大部屋方式で多様な意見を入れ、最初に仕様設計を行っていきます。
4 モデルベース開発を説明する事例の多くはソフトウエアが多いけど
モデルベース開発は、西暦2000年頃、車のECUの制御ソフト開発を効率よく行うために見いだされた手法でした。
そのため、紹介される事例の多くはソフトウエア関係のものが多いです。
一般的な製品開発に活かすことはできないのでしょうか?
モデルベース開発は、実際の製品開発にも活かすことができます。
1Dシミュレーションと呼ばれる手法が取り上げられることが多くなっています。
それ以外にも製品の数学的、あるいは物理的なモデルを作り、そのモデルからプログラムを作成し仕様を設計する方法もあります。
内容的には研究者側に近くなりますが、製品を記述する基礎方程式の構築が求められます。
その部分については、次回以降で説明します。